エリクソンの心の発達段階と支援
ヘルスケアの仕事では人を支援することが求められます。人を支援するということは相手との共同作業を行うことです したがって、まず、相手の立場にたって考えることが大事です。その前提として相手をよく理解することから出発すべきだと思われます。心理的な問題を抱えた人だけではなく、誰に対応する場合でも、支援する人の心の状態をよく把握し、敬意をもって対応することが基本となります。 心の問題を理解し、適切に対応するには、信頼感、自律性、自発性、勤勉性、自我同一性、親密性、継承、統合からなるエリクソンの心の発達における課題が役に立ちます。
第1段階の課題は「信頼感」をもつことです。 人間は周囲に自分を受け入れてもらえることで「信頼感」をもつことができます。 これが達成されないと心には「不信」が芽生えてしまいます。 被害的に感じやすい人の課題が「信頼感」を持つことであるとわかれば、支援方法も変わってきます。 たとえば、何か助けをする時は、その人に対し、前もって説明をして、その通りに行うことで「信頼感」を持ってもらうことができます。
第2段階の課題は「自律性」です。 自分を律することができないと周りと仲良く暮らすための基本的なルールを守れない状態になります。 それが自覚されないことは「恥ずかしい」という状況を招いてします。 そのための支援は、本人に対して批判せず、本人にどうしたらいいかを説明し、うまく対応できたら感謝の気持ちを伝えてその行動を強化することが望ましいと思われます。
第3段階の課題は「自発性」です。「自発性」というのは自分の意思で行動や発言をすることです。 人間は自発的に行動や発言ができることによって生活の質も向上します。 これが否定されると人間は「罪悪感」をもちかねません。また、第三者に配慮できなければ、自発的に行動することは許容されにくい状況になります。 周囲は本人が「自発性」を発揮できるように他人の存在に気づいてもらう必要があります。
第4段階の課題は「勤勉性」です。 最後まで粘り強く努力を重ねることで人は達成感を得られ、そのことによって心の豊かさを育みます。 しかし、人によっては根気強く作業を続けることができずに、「劣等感」に苦しんでいる場合もあります。 「劣等感」の強い人に対しては、皆で協力して何かを作り上げて達成する体験やそれに伴う喜びを味わうことが重要です。
第5段階の課題は「自我同一性」です。 自分が自分らしくありながら、社会生活ができる状態です。「自我同一性の混乱」の状態とは、自信がないために自分の言動に責任を持てない状態です。このような場合は、周囲は本人の意思をできるだけ尊重しつつ、本人が実現可能な目標を設定できるようなアドバスが必要です。
第6段階の課題は「親密性」です。 他人と親密で自立した関係が持てることです。 他人との関係性では自分が相手を支配する立場になっても、服従する立場になっても親しい関係は築けません。 お互いの立場を尊重しながら親しい関係が築くことが鍵であり、それができなければ「孤独」を感じることになります。
第7段階の課題は「継承」です。 自分の役割を次の世代に引き継いでいく役割です。 その役割を見出して周りのために貢献ができない場合には「停滞」が生じます。 他者に貢献できるような役割を持てるように配慮することが求められます。
最後の課題は「統合」です。 良いことも辛いこともあった自分の人生を肯定できることが課題となります。 これがうまくいかないと自分の人生に何も良いことがなかったと「絶望」する状態になります。 このような人には、自分が人生において果たしてきた役割を思い出してもらって、人生を少しでも肯定できるように支援を行うことが望まれます。 (馬場園 明)
