よく生きるための価値とは
「なぜ自分だけがこんな目に」といった経験を持つ人は少なくないと思います。そのような時に、前回紹介した健康生成論はどう考えればいいかという問いに参考になります。一方、ナチの収容所生活を実際に経験した精神科医のヴィクトル・フランクルは、 三つの価値を提案しました。
フランクルは、人間を単なる生物学的な機械や、感情に振り回されるだけの存在ではなく、「身体・心理・精神」という三つの次元が重なり合った存在として捉えました。人は身体、心理が傷ついても「精神的次元」は常に自由であり、損なわれることがないと唱えました。「人間は、自分に与えられた運命に対して、どのような態度をとるかを選択する自由を持っている」と言うのです。そして、人生を支える「意味」に「創造価値」「体験価値」「態度価値」という3つの価値を見出しました。
「創造価値」は、 行動や創作によって何かを創造することで与えられる価値です。 人は仕事をし、モノを作り出すことで、 自分自身に価値を与えられます。「体験価値は」、 体験を通して得られる価値です。人が自然の美しさを体験したり、恋愛をしたり、 人の優しさに触れて感動したり、 さまざまな経験を通して得られる価値です。「態度価値」は、 自分の人生を受け入れ、 自分の生きる姿勢や態度そのものに意味があると考えることです。人間は失敗やトラウマによって、抑うつ、失望、怒りといったネガテイブな感情から抜け出すことは簡単ではありません。しかし、上記の3つの価値を考えることによって、このループから抜け出すきっかけを作ったりもします。
フランクルの視点に立てば、価値とは「持っているもの」や「できること」ではなく、「今、ここにある人生の問いにどう応えるか」という点に尽きます。 たとえ疾病や障害があってもても、私たちは「意味を求める存在」として尊厳を保つことができます。フランクルが示したのは、どんな絶望の淵でも「それでも人生にイエスと言う」ための、温かい知恵なのです。フランクルは、「人生に何を期待するかではなく、人生から何を期待されているかが問題なのである」と言っています。(馬場園 明)
